第1章

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このまま行けば、自衛隊も真っ青な悪魔の行進が始まるに違いない。 そう確信した自分は、阻止するために口を挟むことを決意した。 「田辺さん、さすがに今日は無理なんじゃ・・・ほら、雨降ってますし、そもそも何時、何処でやるかもわからないのでは自分としても動けないですよ」 何で田辺さんはそんなに否定的な顔が出来るのだろうか。自分が見た17年の人生の中でもトップクラスに嫌そう顔をしている。今日でなければいけない理由でもあるのか。 そしてそこのイエスマン、なんで肩をすくめて首を傾げた。この状況で正論を言った自分に対してやれやれこいつはわかってねぇなという態度をとるお前は一体なんなんだ。この状況のなにを知っているんだ。 ・・・そうか、そもそも星を観るという言葉そのものを、自分自身で勘違いしているという可能性を加味していなかった。もしかしたら「星」とは何らかの隠語であり、それをこの2人が使っているとしたらすべて辻褄があう。何より真昼間から「星」を観に行こうとしているのだ。ほぼほぼ確定であろう。 「あ。もしかして星って夜空に輝くものじゃなくて、もっと別のものだったりします?だとしたら」 「そんなわけないじゃないか。空に浮かんでいるもの以外になにがあるっていうんだ」 食い気味に斎藤に否定された。何でこの男はニコニコしながらこっち見てんだ。何だこのイエスマン。自分にだけノーマンじゃないか。 あと部長、そんな満足気に頷くということは本当に天体観測する気なんですね。 「あ、俺パスで」 ここで副部長の新妻(2年 男子)が不参加を表明。これで不参加を考えている者が自分以外にいるということがわかり、ひとまず安心した。 余談であるが、この文芸部は全員で4名在籍しており、内訳は 3年1名 2年2名 1年1名 となっている。ちなみに自分は2年であり、斎藤は完全に部外者である。ではなぜこの場に斎藤はいるのか。それは自分にもわからない。しかし今までの言動を鑑みるに、奴は部長の下僕、または刺客、もしくは鉄砲玉としてこの場にいるのかもしれない。 話を戻そう。部長はまた不機嫌になった。気の弱い人が見たら心臓麻痺を起こすくらいに。 「むむ……部長がいつになく不機嫌になったな、よし、行ってこい」 そう言って自分の背中を押す新妻。やめろ、元をたどればお前の発言が原因だ。自分は一切助けんぞ。
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