第1章

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「待て青葉、どこをどう見間違えたら俺と己の保身のために人を売るような人格破綻者が付き合うという話になるのだ。冗談はやめろ」 「そうだぞ青葉、なぜ自分が怖いからって他者に責任を投げ捨てるような屑と付き合う人間は、例え心やさしき同性愛者であったとしても、確実に0だ。故に自分はこいつと付き合うということは絶対にない。むしろ新妻に彼女はできない。わかったな?」 「お?」 「あ?」 互いに貶し合い、互いに牽制。なんやかんやで我らは仲良し。そういう関係である。 「まぁ漫才は置いといて、どうしてお二人で廊下に出ていたんですか?もしや先輩の目の前で話せないようなワイ談をっ!」 「ないから落ち着け」 新妻がなだめるところを見ながら、自分でこの女子について思考する。 自分はこの青葉という女子のテンションにいささかついていけない節がある。それは趣味の方向性であったり、思考回路の違いであったりと、いろいろな原因が存在するが、とにかく、なんというのであろうか、じゅーしーぱーりーぴーぽーいぇーい、的な人種とはそりが合わないのである。そして青葉は件のじゅーしーぱーりーぴーぽーいぇーいな人間であり、一般的に内気かつ内弁慶な自分にとってはこの上ないほどソリの合わないタイプである。 「とにかく、自分は部室に戻る。2人は2人で好い仲になってろ」 「ほざけ、俺は青葉にも興味は無いぞ。お前こそ青葉と恋仲になれ。悲恋とか繰り広げろ」 「いやぁ、私は消費者としてのカプ厨なので、他人との恋愛に興味は無いですよ。それよりもなんでお二人で部室外に出ていたのかを知りたいんですがそれは」 部室の中に入りながら、青葉に今日の狂った予定を伝え忘れたことを思い出した。今ならこの子だけでも救えるかもしれないそう思い立ち、振り返ろうとして、目測で全長2メートル、高さ1.8メートルはある巨大望遠鏡を2つ磨いてフフフと笑う部長を見てしまった。精神がゴリゴリ削られた気がしたが、なんとか耐えた。 「邪魔だ、早くどけ・・・おっふ」 「どうしたんですか?お二人と・・・もっ?」 あまりの衝撃に固まる二年生。状況を理解することを放棄した一年生。上機嫌な三年生。ニコニコ笑うは部外者。 ここに、今日のデスハイキングの役者が揃った。揃ってしまった。
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