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いつものように電車に乗っていた。
私は大学から家に帰る途中だった。
「あなたの後には誰がいますか?」
急に後ろから女の人の声が掛かる。
私は後ろを振り返ると、私と同様に吊り革に手をかけたグレーのスーツを着た若いサラリーマンが窓を見ながら立っていた。
私に話しかけたようには思えない。
私は空耳だと思い、前を見る。
鏡越しに写った者に目を疑った。
そこにいたのは私の立っている場所にグレーのスーツを着た若いサラリーマンが立っていたではなく、赤いドレスを着た髪の長い女の人らしき人物がこっちを覗いているようだった。
私はイヤフォンをポケットから取り出し、スマホに差し込む。
音楽を聴くためだった。
前を見るとその人は消えていた。
しかし……。
「あなたの後には誰がいますか?」
いつも聞いてる歌なのにそればかりが聞こえてくる。
他の曲に変えても同じだった。
聞こえるんじゃない、聴こえるんだ。
伴奏のリズム合わせて、いつもの歌詞が流れずその言葉が流れるのだ。
イヤフォンを外した。するとメールが来た。
母親からだった。
開いてみる。
『あなたの後ろには誰がいますか』
そこにはそう書かれていた。
友達からもメールが来る。
内容はその一文だった。
ラインを開く。
友達の宛先を開いて書きこむ。
『何の真似だ?からかってるのか?』
即答で返事が来る。
『あなたの後ろには誰がいますか?』
私は急いで打ちこむ。
『ふざけんな!!』
それを打ち込んだ後に他の友達、家族、さらに公式ラインから一斉に送られる。
もちろんその内容は……。
『あなたの後ろには誰がいますか?』
私は急いでラインにいる全員を通知オフにする。
メールが来る。
マナモードで揺れまくる。
周りの人が迷惑そうな顔をしていた。
ツイッターを開き呟いてみる。
『やばい、なんか『あなたの後ろには誰がいますか?』ってメールとか来るんだけど……』
しかし返事はいいねのボタンとあの一文が羅列し始めた。
中にはユーザーで”あなたの後ろには誰がいますか?”というのも現れた。
「まもなく……」
電車のアナウンスが私の最寄り駅を告げた。
私は後ろを振り向く。やはりグレーのスーツの人だった。
そして心の中でつぶやく。
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