『あなたの後ろには誰がいますか?』

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(もうすぐだ。もうすぐでここから出れるんだ) 私は何度もこの言葉を心の中でそう唱える。 前の鏡を見たら赤い女の人が手を振っている。  一人じゃなかった。鏡に映っている全員の数は確実にいた。  そしてあの言葉を言いまくる。  しかし……。 「あなたの後には……」  彼女の声は電車が止まると止まった。私は急いで電車から降りる。  その場で母親に電話をかけてみる。スマホから未だに振動が来る。 「もしもし……」 「あなたの後ろには誰がいますか?」  母親の声じゃなかった。私は電話を切った。  すると非通知から電話が来る。  私はスマホの電源を落とした。   そして自分の家まで十分くらいかけて歩いて帰るのだった。  私はインターフォンを鳴らす。  すると女の人の声が聞こえる。 「あなたの後には誰がいますか?」  私は身動きが出来なくなった。  急に後ろを振り返れない。怖いのだ。  鍵の音と共にドアが開く。  そこには母親が立っていた。 「あなたの後には誰がいますか?」 母親の口からその言葉が出る。声もさっきから聞いているあの女の人の声だった。 私は後ろを振り返った。  しかし今回は誰もいなかった。  安堵して前を見る。  私は彼女の後ろで廊下を歩いて行く赤いドレスの女性を見てしまった。  母親は固まっている私を見るなりこう言う。 「どうしたの。早く家に入りなさい」  私は恐れつつも家の中に入ってしまった。  私は家族と共にいつも通り生活を過ごした。  話す度に母親も父親も兄さえも最初に「あなたの後には誰がいますか?」と女の人の声を出してから話すのだった。  わざとらしくないのは見聞きして私が分かってしまう。だって話す度に赤いドレスの女性がその人の後ろから歩いたり後ろにべったり立っていたりしているからだ。  こうして私は寝る時間が来て寝ることにした。 目を覚ました。スマホがないことに気が付く。  起きて母親に聞いたが、知らないようである。  母親のそれを借りてならしてみるが、反応がない。  スマホのことは気にせず、昨日から続いている恐怖の声を除いていつも通り支度を済ました。しかし彼女は見当たらない。
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