帰り道と雨宿り

13/14
前へ
/21ページ
次へ
そんなことを考えていたら後ろから声がした。なんとなく怖くなって、はや歩きしてみる。時間は21時。さすがに一人で歩いているのは危ないような気がする。早く家に帰らなきゃ。 「あのっ、ちょっと待って。」 聞いたことのある声がした。私がずっと待っていた声のような気がした。期待のせいでそう聞こえたのかもしれない。でも、私は足を止めずにはいられなかった。 振り返る。やっぱりそうだった。期待のせいでそう聞こえたんじゃない、やっぱり成瀬さんだった。 「こんばんは。ごめん、引き止めちゃって。こんな時間に女の子が一人で歩いてたら危ないよ。」 「な、成瀬さん。こんばんは。コンビニ行ってて、その、ごめんなさい。」 「別に、謝らなくて大丈夫だよ。けど、ほんとに危ないよ。」 「えっと、気をつけます。」 「理沙ちゃんは、」 「は、はい?」 「素直そうだから心配だよ。ふわふわしてるし。」 「えっと、ふわふわはしてないと思います…。大丈夫ですよ、普段はこの時間は家にいますから。」 成瀬さんは心配性な人なのかもしれない。確かにさっきは危ないような気がしたけど、私も、もう17歳なのだから自分のことは守れるつもりではいる…つもりだけど。 「そういうのが、」 成瀬さんは一呼吸置いてからもう一度言った。 「そういうのが、ふわふわしてるって言うんだよ。」 少し笑いながら優しく諭すように言った。子ども扱いされているのだと思う。でも、しかたのないことだと思う。成瀬さんは社会人で私は高校生だ。改めてその事実が胸の奥で響いた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加