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そんなことを考えていたら後ろから声がした。なんとなく怖くなって、はや歩きしてみる。時間は21時。さすがに一人で歩いているのは危ないような気がする。早く家に帰らなきゃ。
「あのっ、ちょっと待って。」
聞いたことのある声がした。私がずっと待っていた声のような気がした。期待のせいでそう聞こえたのかもしれない。でも、私は足を止めずにはいられなかった。
振り返る。やっぱりそうだった。期待のせいでそう聞こえたんじゃない、やっぱり成瀬さんだった。
「こんばんは。ごめん、引き止めちゃって。こんな時間に女の子が一人で歩いてたら危ないよ。」
「な、成瀬さん。こんばんは。コンビニ行ってて、その、ごめんなさい。」
「別に、謝らなくて大丈夫だよ。けど、ほんとに危ないよ。」
「えっと、気をつけます。」
「理沙ちゃんは、」
「は、はい?」
「素直そうだから心配だよ。ふわふわしてるし。」
「えっと、ふわふわはしてないと思います…。大丈夫ですよ、普段はこの時間は家にいますから。」
成瀬さんは心配性な人なのかもしれない。確かにさっきは危ないような気がしたけど、私も、もう17歳なのだから自分のことは守れるつもりではいる…つもりだけど。
「そういうのが、」
成瀬さんは一呼吸置いてからもう一度言った。
「そういうのが、ふわふわしてるって言うんだよ。」
少し笑いながら優しく諭すように言った。子ども扱いされているのだと思う。でも、しかたのないことだと思う。成瀬さんは社会人で私は高校生だ。改めてその事実が胸の奥で響いた。
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