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朝目を覚ますと昨日のできごとが全部夢のように思えた。私は制服に着替えてリビングで朝食をとる。いつもの朝。昨日までと何一つ変わらなかった。
昨日は結局家の中に入っても涙が止まらなくて、ベッドの中で泣きながら眠った。成瀬さんがどうして私の涙を拭ってくれたのかは全然分からないし、成瀬さんなんてまるで存在していないかのようないつも通りの朝だった。
家を出ると、太陽の眩しさに目を細めた。昨日とは正反対の晴天だった。昨日成瀬さんと別れた道まで走った。昨日の全てを振り切るように。そんなことで振り切れるわけはないし、息が苦しくなっただけだった。
呼吸を整えていると後ろから声をかけられる。
「はよ。朝から元気だね、中西は。」
「おはよう。別に元気だから走ってたわけじゃないよ。そういう織野くんは眠そうだね、徹夜?」
「徹夜はしてないよ。ちょっと寝不足なだけで。」
そう言いながらあくびを噛みしめている織野くんは、ちょっとの寝不足という感じではなさそうだった。
「そういえば左藤は一緒じゃないんだな。」
「有紀は駅から反対方向だから。」
「あ、そっか。あいつ反対方向だったな。ていうか中西、朝早いのな。」
「普通じゃない?織野くんはいつもHRギリギリだからそう思うんだよ。」
「中西は厳しいな。」
否定しかけて、そんなこと、と言いかけたとき目の前を成瀬さんが通った。いつもは電車ではなく車で通勤しているのか、信号に引っかかっていた。
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