帰り道と雨宿り

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「あのっ…」 どうしよう。言葉が出てこない。 なんて言えばいいのかな。 なんて言えば伝わるのかな。 目の前にいるあなたは困ってる。 当たり前だよね。 だって急に呼び止められて、その先がないだなんて。 誰だって困っちゃうよね…。 「大丈夫?平気?どっか痛い?苦しい?」 ああ、あなたは本当に優しい人。 また心配させてしまった。 ごめんなさい。 「また、会えますかね…」 気がつけば呟いていた。 こんなこと言ったらまた困らせちゃうのに。 「そうだなぁ…じゃあこうしよう。また雨が降ったらここで雨宿りしよう。その時にいっぱい話をしよう。それでいい?」 嬉しかった。 「はい。あの、すいません…。」 うまく言えないけど、きっと恋なんだと思った。 あの人がいなくなった後、少しだけ涙が出た。 次の雨…はやく雨が降ればいいと思った。 「今度は名前きかなくちゃ…」 思わずひとりごとを言ってしまった。 駅までの10分間私はただただあの人のことを考えていた。
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