俺は恋人を裏切る

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目が覚めると、軽い頭痛に襲われた。 同時に気づいたことは隣に女が寝ていること。 でも、どうやら恋人の真白ではなさそうだ。 また、やっちまったらしい。 俺は高校3年の時に酒と女を覚えた。 初めての時から、この二つはワンセットで。 俺はバカみたいに酒に弱く、酒を飲んだら忽ち酔いが回って記憶をなくすことがわかった。 初めての時に居合わせた友だちの話によれば、酔った俺は野獣に変わったそうだ。 普段は甘いマスクで女性に優しく接している草食っぽい俺が、酒を飲んだ途端、居酒屋の近くの席にいた見ず知らずの女性を押し倒したと言う。 友だち3人がかりでようやく俺を抑え込んだところで、彼女が言ったそうだ。 ここじゃなんだから、私の家に来てと。 友だちが呆気に取られている前で俺はその女性とタクシーに乗り込み去って行ったとのこと。 だから、俺の初体験は酩酊状態のため記憶が抜け落ちているという何ともお粗末な話。 目が覚めると見知らぬ部屋のベッドの上で、全裸の女と一緒に寝ていた。 それ以来、酒を飲めば毎回こうなる。 それでも、俺が強姦罪で捕まっていないのは、俺が女受けする容姿の持ち主だからだろう。 そんな俺の性癖を知って、抱かれたいがためにわざと俺に酒を飲まそうとする女は数知れず。 騙されたり嵌められたりして酔わされて抱いてしまう度に、軽い自己嫌悪に陥ることはあっても、仕方のないことだと思っていた。 好みじゃない女を抱いてしまっても、夕べの自分は確かにいい思いをさせてもらったんだから怒る気にはなれない。 何人かの女とはそんな始まり方でカレカノになったりもした。 そういう女でも交際中に俺が酔って他の女を抱いてしまうと、皆あっさりと俺から去って行った。 それはそうだろう。こんな下半身が暴走するような男を彼氏にしておくなんて余程寛容な女じゃないと無理だ。 俺は恋人を裏切る。恋人のプライドを傷つける。 俺に愛情を寄せてくれていればいるほど、嫉妬で苦しめてしまう。 そんなことはわかっているのに、俺は真白に交際を申し込んでしまった。 自分から女に惚れたのは初めてで、これほど誰かの全てを欲しいと思ったことも初めてだったから。 こんなことは恥ずかしくて真白にも誰にも言えないが、真白は俺の初恋の相手だ。 22歳の遅すぎた初恋は、幸い成就した。
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