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まさか男に嵌められるとは思いもよらなかった。
中島が真白に気があるのはわかっていた。
真白が店に来るとあからさまにそわそわしていたし、何かと声を掛けていた。
それでも、俺はビクともしなかった。真白が俺に惚れていることは誰よりも俺が理解している。
過失とは言え他の女を10人以上抱いた俺でも、真白は離れられないんだ。
その話を中島にしたら信じられないと驚いていた。
誰が聞いたって信じられないだろう。俺だって凄いことだと思う。
中島は真白が浮気ぐらいで俺に愛想を尽かさないと知っているのに、なぜ嵌めたりしたんだろう?
答えは出ないまま家を飛び出して、真白の家へと急いだ。
余程パ二くっていたのか真白のマンションの下に来てから、俺はやっと気づいて携帯をチェックした。
案の定、夕べから1時間おきに真白から電話やメールが来ていた。俺は記憶をなくして、コトに及んでいる真っ最中だったんだから気づくはずもない。
恐る恐る真白の家のチャイムを鳴らすと、凄い勢いで開いたドアの向こうには真白の心底ホッとしたような顔があった。
こいつはきっと一晩中、俺のことを心配してくれていたんだ。
事故に遭ったんじゃないか、病気で倒れているんじゃないかと不安だったに違いない。
そういう女なんだ。真白は。
足元から愛しさと罪悪感が押し寄せた。
「遅くなってゴメン。心配した?」
気づけば真白を思い切り抱き締めていた。
柔らかくて温かくていい匂いのする真白の体を堪能する。
「あー、落ち着くなぁ。」
ハラハラドキドキしていた胸のざわめきがスーッと溶けていく。
こんなことをできるのは真白だけだ。
「心配したよ。夕べ、どうしたの?」
その言葉でまた嫌な汗が出てくる。
動揺して速くなった鼓動を聞かれないように真白の体を解放してから、俺は一晩中ゲームをしていたという嘘を口にした。
電車の中で必死になって捻り出した嘘だ。
俺は真白には嘘をつかない。
でも、他の女を抱いてしまった時は別だ。
バレなければ、お互い幸せでいられるんだから、わざわざ告白する必要はない。
実際、今までバレなかった情事も4回ほどある。
でも、面と向かって嘘をつくと必ずバレる。
会えばバレる可能性が高いのに、会わないではいられないんだからしょうがない。
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