俺は恋人を裏切る

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ヤッちまったものは今更どうしようもないが、職場の人間関係をギクシャクさせないように、真白に余計な心配をかけないように何とかしなくてはいけないとは考えている。 俺が真白をすぐに追いかけずに、こうやってああでもないこうでもないと考えているのには訳がある。 それは目の前のテーブルの上に真白の携帯があり、床に置かれたバッグから真白の財布が覗いているからだ。 「トロ臭い奴。ホント俺がいないとダメなんだから。」 真白自身は自分のことを結構しっかりしていると思っているようだが、あいつはスコンと抜けているところがある。 そこがたまらなくかわいい。 そばにいて、一生面倒を見てあげなくてはと思う。 それがきっと俺がこの世に生まれてきた理由なんだと思っていることは、まだ言えないけど。 他の男にこの役目を取られたくない。 ところが、すぐに帰ってくると思っていた真白は全然帰って来なかった。 気恥かしくて、すぐに帰れずにその辺をブラブラしているのかと思い、テレビを見ながら待つこと1時間。 遅い。 とりあえず行き違った場合に備えて、心配だからその辺を探しに行くという書置きを残して外に出た。 まずは駅周辺。ウインドーショッピングするような店はないから、やはり真白の姿はなかった。 そうだ、図書館! 駅の反対側にある図書館は真白のお気に入りの場所だ。 ―お金をかけずに心を豊かに出来る。 そう言って2週間に1度は図書館に通う真白は堅実で質素な生活を好む女だ。 専門学校を出て働き始めたばかりのハタチの若い娘にしては珍しい。 俺の周りには刹那的で派手好きの女ばかりだったから、初めはその地味で真面目な態度にとまどったが、今では真白の美点の一つだと思っている。 ずんずんと図書館まで歩いて来て、何やら様子が違うことに気が付いた。 「改装工事中。」 そう言えば真白がそんなことを言っていたようないなかったような。 絶対ここだと確信していただけに、途方に暮れた。 友だちの家か? 高校まで岡山の実家にいた真白の友だちはほとんどが岡山にいる。 専門時代の親友は路線が違うから、歩いて会いに行くことは考えられない。 会社の同僚については、よく知らない。 入社して半年だから、家を訪ねる仲の同僚が出来たかもしれない。 それが男だったら、ちょっとヤバい。
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