演技なんかじゃない

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「相手を思いやっての嘘ってこともあるだろうし、本当のことなんて結局わからないですよ。私は司は嘘をついていないと思います。だから、彼を信じてついて行こうと思うんです。」 私がそう言い切って道城さんの顔を見ると、道城さんは困ったように眉を下げた。 「まあ、そうだな。まだ若いんだから、やり直しはいくらでも効くよな。また裏切られて愛想が尽きたら、俺がおまえの面倒を見てやるよ。」 「どーも。でも、そんな日は来ないですから。」 ちょっとドギマギした。でも、きっと道城さんは本気じゃない。本気で心配はしてくれているけど、私に恋愛感情は持っていない。 そして、私も道城さんはそれほど怖くないけど、やっぱり触れられるのは嫌だ。 私のマンションが見えて来ると、入口に人影が見えた。 「え?何で…」 「彼氏?」 「はい。今日は飲み会だからって言ったのに。」 それぞれの家で過ごそうと話していたのにどうして? タクシーが停車すると、奥に座る私を降ろすために道城さんが一旦外に出た。 「こんばんは。真白がお世話になりました。」 営業用スマイルを浮かべた司が道城さんに頭を下げているのを見ながら、私はタクシーを降りた。 「道城さん、タクシー代の足しにして下さい。」 そう言ってさり気無く出した5千円札を道城さんは受け取ってくれなかった。 「バーカ。余計な気を遣うんじゃねえよ。」 「でも、ここまで結構ありましたよね?」 「じゃあ、給料日前に一緒に昼飯に行って奢ってくれ。」 「はい。じゃあ、お言葉に甘えます。お気をつけて。」 私が頭を下げると、タクシーに乗り込もうとした道城さんがふと司を見た。 「相羽さんでしたっけ。結婚されるんですよね。おめでとうございます。」 「ありがとうございます。」 「こいつはバカみたいにあんたのこと信じているんで、嘘ついているなら一生つき通してやってください。」 ハッとして道城さんを見た。あれほど嘘を見破る必要性を説いていたのに。 「嘘はついていないし、これからもつきません。」 「ほう、そうか。矢口はアレの最中、感じている振りをしているそうだけど?じゃあ、また。」 メガトン級の爆弾を落としたまま、道城さんを乗せたタクシーは走り去って行った。 「司。えっと。ただいま。どうしたの?今日はこっちに来ないんじゃなかった?」
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