演技なんかじゃない

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「意外と早く上がれたから来た。来て良かったよ。まさか道城さんを家に上げるつもりじゃなかったよな?」 「まさか。志保が潰れちゃったから、一緒に送って行っただけだよ。志保の彼氏に聞いてもらえば分かるから。」 「そんなに必死に言い訳しなくても、真白のことは信じてるよ。さあ、もう中に入ろう。」 司はサッと私のバッグを持つと、右手を私に差し出した。だから、私も左手を滑り込ませた。どちらからともなく絡め合う指にたぶん二人とも安心している。 「で?真白はいつ演技していたわけ?感じていないのに喘ぎ声出してた?」 道城さんの落とした爆弾はスルーされることなく、二人でベッドに入ったタイミングで問い詰められることとなった。 「司は気付いていたんじゃないの?」 だから、道城さんに言われた直後に反応しなかったんだと思った。 「全然。ホントに?感じていないのに感じた振りをしていた?いつもじゃないよね?」 保安灯の下では司の表情はよく見えない。でも、その声は十分ショックを受けているようだった。 「いつもはちゃんと感じているよ。演技なんかじゃない。それは信じて。」 「うん。そうだよね。演技であんなに濡れる訳ないし、アソコを拍動させられない。」 「司が浮気したって白状した後、許してくれ、俺が愛しているのは真白だけなんだって言って強引に抱いていたでしょ? ああいうときにね、なんか心が空っぽになっているのに司が必死に愛撫して来るから、感じた振りをしていた。 でも、最初だけだよ。だんだん司の気持ちが伝わってきて許そうって気になってくると、自然に感じるようになっていったから。」 「そうだったんだ。」 「ごめん。ショック?」 「いや、そりゃそうだよな。裏切られていたってわかって、すぐいつも通りに感じる訳ないよな。でも、俺がショックなのはそれを道城さんに言われたってことだよ。」 「ごめん。まさか道城さんが司に言うなんて思わなくて。プライド傷つけたよね?ホントにごめん。」 「プライドもそうだけど。」 そこで言い淀んだ司はギュッと私を抱きしめた。ベッドに入ったものの微妙な距離を保っていた私たち。それがいきなりピタリとくっついて、ホッとした。
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