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焦る心を押さえながら急いで真白の家へ帰った。
さて、どうするか。
俺は真白の携帯を片手にさっきから悩んでいる。
真白は携帯にロックを掛けている。
でも、その暗証番号を彼女は俺に教えてくれていた。『司の誕生日だよ』と。
自分の誕生日を恋人が暗証番号にしているというのは結構嬉しかったりする。
特別な相手だから誕生日だって忘れるはずがないと言ってくれたようで。
暗証番号を教えてくれているんだから、ロックを解除して中身を見ても構わないよな?
俺だって真白の誕生日を暗証番号に設定していて、それを真白にも話してあるから、いつ真白に着信履歴やメールの内容を見られても構わないと思っている。
そうは言っても、親しき仲にも礼儀ありだ。
真白の目の前で断りを入れてから見るのと違って、こっそり覗き見るような真似はしたくない。
だから、たっぷり迷ったが、あれからもう2時間半だ。
意を決した俺はロックを解除した。
「なんだよ、これ。」
電話もメールも発信も着信も。履歴のほとんどが俺の名前で埋め尽くされていた。
じんわりと目頭が熱くなる。
真白にとって俺が世界のすべてなんだ。
こんな可愛い彼女を傷つけるようなことを俺は何度も繰り返していたのか。
着信メールに一件、俺じゃないのが紛れ込んでいたが、それは会社近くのレンタルビデオ店の返却期日を知らせるメールだった。
電話の発信履歴に混ざっていたのは『お母さん』。
岡山市の市外局番から始まっているから間違いない。
たったそれだけ。それ以外は全部『司』。
胸が熱くなったけど、今、真白がどこで何をしているかの糸口は掴めない。
ならばと、電話帳を開いた。
電話帳は綺麗にグループ分けされていて、真白の勤める『SK商事』というタグの付いた個人の名前は5人登録されていた。
遠藤課長、山元係長、道城一夜、清水かほり、小室志保。
全員聞き覚えがある。道城さんと清水さんは同じ部署の先輩で、『志保』が同期。
小室志保の番号をコールすると、すぐに元気な声が聞こえてきた。
「真白?どうした?水族館デートだったよね?」
楽しみにしていて、友だちにも話していたのかと真白がかわいそうになった。
「小室志保さんですよね。突然すみません。私、真白の恋人の相羽司と申します。」
「え?あ、司さん、ですか?」
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