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「お休みのところを突然すみません。私は矢口真白の恋人で、相羽司と申します。いつも真白がお世話になっております。」
「へえ、恋人?そんなのがいたんだ。で?」
「ちょっとケンカして真白がいなくなってしまって探しているんです。そちらにお邪魔していないかと思いまして。」
俺がそう尋ねると、道城はハハッと笑った。
「あんた、必死だな。まさか登録してある電話番号に全部掛けてるんじゃないよな?」
「いえ、小室さんに聞いたら、道城さんのお宅が真白と同じ沿線だと教えてくれたので。」
「なんだ。そういうこと。確かに矢口とは2駅違いだけど、住所までは教えてないし。突然、押し掛けて来られるような仲じゃないんで、ご心配なく。」
俺の懸念は筒抜けだったようで、いなくなった真白を心配するでもない言い方に逆にホッとした。
真白が俺を裏切るわけがない。当たり前だ。
道城さんに礼を言って電話を切ると、途方に暮れた。
真白の交友関係は思ったよりも狭くて、他に行きそうなところなど思いつかない。
もしかしたら、てくてく歩き続けているとか?
もう日が暮れてきた。まさか女の子が野宿する気か?
いやいや、あいつだってバカじゃない。
あいつが寝る場所と言ったら、ここか俺の家しかないんだから。
そこでやっと気づいた。
そうか!俺の家かも?!
俺に腹を立てたのに、俺の家に行くなんて思いもよらなかったけど、真白ならやりそうなことだ。
俺は真白の家を飛び出して、自分の家に向かった。
どうか居てくれ。どうか無事で大人しく俺の家に居てくれ。
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