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「仕事上りにバイトの女の子たちを労うための打ち上げをやったんだよ。」
そういえば、司のお店が入っている大型ショッピングモールでクリアランスセールをやっていたっけ。
「俺がアルコール飲めないって言ったのに、中島の馬鹿がその理由を女の子に教えちゃったらしくて。」
司はお酒を飲めないわけじゃない。少しでも飲むと記憶をなくして豹変してしまうだけだ。
「トイレに立った隙にウーロン茶がウーロンハイに替えられていたとか?」
「たぶん、そんなとこ。」
「何で中島くんは止めてくれなかったの?」
司のお店で働く中島くんにはお店に買い物に行った時に何度も会っている。
私と同い年の背の高い男の子だ。
司と私が付き合っていることも知っているのに、止めないなんてありえない。
「もう一人のバイトの子を狙っていたとか?」
投げやりな調子で司は言うけど、誠実そうな中島くんに裏切られたような気になってしまう。
いやいや裏切ったのは目の前のこいつだ。
「で、気がついたら、隣に全裸の女が寝てたっていういつものパターン。」
「全然、覚えてないの?」
「あー、まあ、ちょっとは。ヤッたって記憶は所々ある。」
「あっそ。」
本当に呆れる。何よ。『いつものパターン』って。
怒りで自分の体が小刻みに震えていることに気づいた。
「真白?本当に悪かった。ごめん。」
「ごめんって謝れば済むと思ってる?もうこれで何回目?
謝っても、すぐにまたやるじゃない。その繰り返し。」
この2年半の間に何回浮気されたかなんて数えたくもないからわからないけど、両手じゃ足りないことは確かだ。
「ヤりたくてヤッたんじゃない。いつもそうだろ?」
開き直ったような態度にブチ切れた。
「そうだよね。飲みたくないのに居酒屋に行って飲まされたり、はめられて飲まされたりだよね。
でも、人間、本当にやりたくないことは記憶なくしてたってやらないものだよ。
催眠術で自殺させられないって言うでしょ?
司が私以外の女の子とエッチしたくないって本当に思ってたら、拒めるはずでしょ?!」
「本能には逆らえないよ。1か月分溜まってたし。」
生々しいことを言われて、思わず両手で耳を塞いだ。
「もう聞きたくない。」
「真白。消毒して。」
その手を耳から引き剥がして、司が耳元で囁いた。
「何言ってるの?」
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