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「2000円貸すし、倍にして返さなくていい。
こんなところにいないで、友だちの家にでも行きなさい。」
私とは10歳ぐらい年が離れているせいか、時々瀬名さんはお父さんっぽい言い方をする。
「身を寄せるような友だちいないし、司が帰ってきたら私も自分の家に帰るんで大丈夫です。」
瀬名さんは遠慮する私に2000円を押しつけるように貸してくれて、
「司が帰って来て乱暴なことしようとしたら、助けてって叫ぶこと。ドアぶち破っても助けに行くから。」
と言ってくれた。
瀬名さんの家を出るとそのまま買い物に出かけた。
徒歩5分の距離にスーパーがあるのがこのマンションの最大の売りだ。
明日の朝までいることを考えて、食材をカゴに入れていく。
気が付けば自分の好きなものではなく、司の好物の和風ハンバーグの材料をカゴに入れていた。
まあ、いいや。
多めに作って冷蔵庫に入れておけば、今晩でも明日の晩でも司が食べるだろう。
自分がどうしたいのかわからない。
司と別れたいのか、このまま付き合い続けたいのか。
別れたいと思っても、本当に別れられるのだろうか。
あのどうにも魅力的な男から本気で離れられるのだろうか。
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