第1章

1/6
前へ
/32ページ
次へ

第1章

「今度の土曜日、会社の社員寮でバーベキューやるけど、所長が奥さんも一緒にどうか?って」 夕食の片付けをしている妻に向かい、徳井隆弘は声をかけた。 「んー、ちょっとまって」 妻の幸恵は、洗い物の手をとめて手帳を見ていた。在宅でフリーのプログラマーをしているのて、予定の確認だ。 「いいよ。急ぎの納期のものもないし」 「あ、そう言えば同僚の田村、彼女つれてくるって」 「えー本当に?!彼女さんくるの?うれしいな」 隆弘が思い出したように付け加えると、幸恵は嬉しそうに答えた。 他県から結婚を機に移り住み、まだ子どもがいないため周りに交流できる人が少ない幸恵にとって、"田村の彼女さん"は数少ない交流できる人なのだ。 もっとも、田村を通じてしか会うことはないが。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加