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「えっ……」
誰だろう。
知らない人。制服もブレザーでうちの学校のものではない(わが校は珍しい学ランなのだ)。
少し人間離れした白さのきめ細かい肌、たれ目の瞳は黒みがかった赤銅色。襟足が長いくすんだ金髪は項で乱雑に括られている。
外国人だろうか。美しいけれど生気が感じられない、まるで美術品のような雰囲気が漂っていた。
彼の前には、日焼けが酷いふるくたびれた文庫本がおかれている。何度も読み返したのか、表紙の印刷もところどころ剥げていた。
彼はじっとりと赤銅の瞳で私を貫く。
まるで標本にピン止めされた虫のような気分になって、思わず視線を彷徨わせた。
どうしてこの人はこんなに私を見てくるのだろう。
もう一度言おう。断じて知り合いではない。
…。
帰ろう。きっと思い違いだ。
私が視線を振りほどいて立ち上がったその時。
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