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テルの家には住み込みの使用人が二人いた。二人は祖父の代から仕えていた。テルが生まれる前から家にいることになる。 テルは二人をじいとばあと呼んでいた。 金持ちへのやっかみもあり、テルはいろいろな噂をたてられるが、ありとあらゆる世話をするメイド服を着た若い家政婦がいるというのもその一つだった。 実際には、じいとばあがその役割を担っていた。テルにとってじいとばあは使用人というよりも義理の親といってもいいほどだった。 両親との接触が少ない中で、テルという人間の成長にじいとばあ、そして、この叔父が影響しているのは間違いなかった。 「この間は何の仕事だったんだい?」 「引っ越し屋だった」 テルは苦笑いしながら言った。 テルの父は社会勉強として、テルの父のグループ会社でテルにさまざまな仕事を経験させることがあった。もちろん、グループ会社の社長の息子であることを隠して。テルのメールはそれに関連する内容がほとんどだった。 「引っ越し屋?また、どうしてだい?」 「親父が言うには、引っ越しの仕事には三つの学ぶべき点があるそうなんだ。一つは仕事をさばく段取り力、もう一つはお客様が求める仕事のスピード感、最後はお客様と直に接することができること。これを若いうちに経験しておけば、上に立った時、役に立つって言ってる。後、おまけで身体も鍛えられるってさ。あっそれから、結構、きつい人が多いから人間関係も学べるって言ってたよ」
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