幕開けは午前3時46分

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昔から私には人には見えないモノが視えていた。 それ等は様々な形と色で現れ 様々な臭いだった。 人と違うから 周りと違うから 気味悪がられ、嘘吐き呼ばわりされ 私はいつしかそれ等の存在を否定し 視なくなった。 いや、視えていないフリをした。 それは自分を否定する事と同じで、何かの宿命から逃げているような…放棄しているような 罪悪感が胸を締め付ける。 その締め付けが痛みとなり私を苦しめた。 夜中になると必ず私の寝室にはそれ等が居た。 見張られてるように感じたりもした。 どこからか呻き声も聞こえるし呟きも聞こえるけど、私はそれにさえも気付かないフリをした。 そうする事で本当に聞こえにくくなるので好都合だった。 アイツらが何を言ってるのか聞きたくも無かったし。 いつも微かに聞こえる声をBGMにして眠りにつくのだった。 そんな変哲も無い何時もの夜が過ぎようとした夜中だった。 この日は彼等の数がいつもよりも多く 空気も重くて腐った玉子のような、生ゴミのような臭いが酷く漂っていた。 色々とここ最近の出来事を振り返り考え過ぎたせいもあり、この刺すような居心地の悪い視線と悪臭。 おかげで眠れない。 もう深夜も深夜、丑三つ時という時間帯。 いい加減眠いのに異臭が酷くて眠れない。 臭い... 臭い...... 臭いっ!! 限界に達した。
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