明日晴れますように

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雨が降っていた。 しんしんと降る雨は止むことを知らず、全てを洗い流していくようだった。 全て。何もかも。 あの日を思い出す。あの日もまた、雨が降っていた。 私が彼に出会ったのは、ある雨の日だった。 高校の帰り道、傘を差して歩いている私の前に、彼は現れた。 気がついたら目の前にいた。 人通りの多い駅前で、傘もささずに土砂降りの中を、首だけ傾けて空を見上げている。 その表情は、笑っているような、泣いているような、怒っているようにも見えた。 「そんなとこにいたら濡れるよ」 そんなつもりはなかったのに、気がついたら私は初対面の彼に話しかけていた。 彼は首だけ動かしてちらと私を見る。 「大丈夫。雨は好きなんだ」 答えになっていない。 雨が好きだから濡れてもいい、というのか。 彼は視線を空に戻して、言った。 「君はなんで傘を差しているの?」 その質問に私は唖然とする。 「濡れるから? それとも、雨が嫌いだから?」 そんなの、濡れるからに決まっている。けど理由はそれだけじゃない。 わざわざそんな問いを投げてくる彼に、眉をひそめる。 すると彼はもう一度こちらを見て口を開いた。 「もしかして……傘が好きだから?」 悔しいけど、正解。 傘が雨を弾く様子を、傘の内側から見ているのが好き。 傘が雨を弾く時の音が好き。
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