トランプ5枚だけ揃える 簡単なゲーム

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レンは強く訴えかけてくるその視線を無視して、カードをカッティングマシーンにセットした。 そのボタンに手を伸ばす。 二度目の神業。 先ほどと同じように集中力を限界にまで高めると、頭の片隅がチリチリと痛んだ。 レンを他所に、貴公子は彼女に向かって言った。 「貴女の態度はナンセンスだが、見習うべきでもあるようだ。勝負は強気なものが制する。私は少し臆病風に吹かれてしまっていたようです。王女の加護を当てにするのはもうやめましょう」 レンは貴公子の言葉を聞き流しながら、カッティングマシーンのボタンを押す。 若い女が言った。 「どうせ王女も革命で落ちぶれちゃうものね」 隣のメガネの優男が、おかしそうにクックッと喉を鳴らして笑う。 「僕たちの気分次第で、持ち上げられたり、落とされたり。こんな扱いじゃ、王女はさぞかし僕らを恨んでいるだろうな」 「いいえ、そんなことは無いと思いますよ」 そう言って首を横に振ったのは、彼女だった。 彼女は言った。 「王女は、例えどんなふうに扱われたとしても、相手が幸せだと納得できたなら、それで本望だと思います」 (っ!?) それを聞いたとき――聞こえてしまったとき、レンの集中力が一瞬途切れ、カッティングマシーンのボタンを離すタイミングがわずかに狂った。 (しまった) ずれたタイミングから、すぐに現在のカードのシャッフル状況を計算し、当初に計画していた順番に並び替えるために、あとどれだけシャッフルが必要かを割り出す。 美女が、彼女に言った。 「優しい王女さまなのね」 「……昔、私にそのゲームを教えてくれた人が、そう言ったんです」 彼女の言葉に、レンの手元がまた狂う。 (――くそっ!) 集中力が途切れかけている。 冷静になれ、と自分に言い聞かせ、再度計算し直し、ボタンを押す。 (よし) これで自分の思った通りにカードは並んだはずだった。 レンはデッキをシューに収め、全員分のアンティを受け取ると、カードを配った。 ディーラーズボタンはメガネの優男に移っている。
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