第1章

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「シロコちゃん、シロコちゃんはメレンゲを作ってちょうだい!」 《メレンゲ?》 「そう、メレンゲ!パンはイースト菌が頑張るから膨らむのよ。でもシフォンケーキはメレンゲが頑張るからあんなにふわふわに膨らむの。メレンゲを失敗しちゃうとシフォンケーキは作れないわ!だからシロコちゃん頑張ってね!」 シロコちゃんに話しかけながら、冷蔵庫から取り出したばかりの生卵を3個割り、白身だけシロコちゃんのボウルに入れて、そこにお塩を一つまみだけ入れた。 「シロコちゃん、メレンゲまぜまぜ頑張ってね!」 《おいらは何をするんだい?》 「カラスさんは、そのスプーンで小麦粉をすくって、秤の上のコップに50g入れてちょうだい!」 《それだけかい?》 「終わったら教えて!そのときは次のお仕事お願いするわ」 《やれやれ》 「にゃーん!」 「あら、どうしたの、シロコちゃん?」 《メレンゲ、できた?できた?》 シロコちゃんのとは別のボウルで卵黄をかき混ぜ始めたとき、シロコちゃんが鳴いた。のぞきこんだら白身はドロドロからブクブクになったみたい。 「まだこれはメレンゲじゃないよ。まってて、お砂糖を入れるから!」 小さな計量スプーンでひとすくい。それをシロコちゃんのボウルに入れた。 「はい、またかき混ぜてね!」 ちょっとしょんぼりしてシロコちゃんはカシャカシャメレンゲを作る作業に戻った。 《量れたぞ!》 「あ、ありがとう!じゃあ次はお砂糖を量ってくれる?」 《おんなじ量かあ?》 「そう!さっきのスプーンで6個くらいかな?あ、一杯こっちのボウルに入れてもらっていい?それで5杯分を量ってもらえればいいから!」 《そんなことしたら重さが変わるだろうがあ!》 「大丈夫、大丈夫!量った後に一杯だけ戻せばいいのよ!」 《・・・かぁ》 シャカシャカ、シャカシャカ。 《もういいかにゃあ?》 シロコちゃんが見せてきたボウルの中にはトロッとしてきたメレンゲ。 「うん、もうひと頑張りだね!カラスさん、お砂糖は量れた?」 《もう帰ってもいいかぁ?》 「こんどはさっき量ったお砂糖、小さいスプーンで数えながらシロコちゃんの所に入れて!」 私は小さじを渡して、自分は白くてマヨネーズのようになってきた卵黄が泡立て器から細く垂らしてもボウルに戻ったとき円を書けるくらいのかたさにまで混ぜたものに油を50cc入れてぐるぐる混ぜながら答えた。
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