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『すずこさん』
『はい』
呼びかけた俺にすずこさんが視線を向ける。俺はしっかりと彼女の瞳を見つめた。
『アツシさんと付き合うなら覚悟してくださいね。僕、簡単にはアツシさんを譲る気ないですから』
にっこりと笑いながらの宣戦布告。
本気で邪魔する気なんてないけど、一応言っておきたかった。でも彼女から帰って来たのは思いもよらない言葉だった。
『タカヒロ先生はアツシさんにとって大切な人ですものね』
『え?』
彼女は俺に微笑んだ。その微笑みには敵意なんて微塵もなく、母親のような優しさに満ちていた。
『アツシさんが言ってました。タカヒロ先生は僕の一番の理解者だって…』
『…』
込み上げる涙が俺の言葉を詰まらせる。
参ったな…敵わないや。
興味本意な気持ちじゃないのは分かっているけど、こんな風に宣戦布告した俺にこんな言葉を投げ掛けた彼女。
俺なんかじゃ逆立ちしたって敵わない。
やっぱり彼女とアツシさんは出会うべくして出会ったのかもしれない。
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