第1章

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珍しくネクタイを締めた自分を鏡で確認する。鏡の中に映る少し気取っている自分。地味目のスーツ。初日から目立つのもどうかと思ったからこの色にしたけど、やっぱり控えめには見えない。ま、仕方ないよな。 だって、俺「王子」だから… 俺は今日から音楽教室のボイストレーナーの職に就く。「先生」なんてガラじゃないけど、歌に関わる仕事がしたかった。それがこの仕事を選んだきっかけだ。 さて、第一印象って大事だからな。俺は早めにつくように家を出て職場になる音楽教室へと向かった。 講師の数はそんなに多くない。けど見事に女ばっかだな。俺はいつものように相好を崩し、笑顔を見せつけて頭を下げた。 笑顔って大事。それが分かってから、この笑顔は俺の仮面のようになっている。 ある意味、自分を守る鎧みたいなものだ。この笑顔で無理を言えば、たいていの事は許されるしやりすごせる。 昔から女の人に「王子」と呼ばれて持てはやされてきた。結果、俺は自分をよく見せる方法ってのを理解している。 思った通り俺を見た女性講師たちは感嘆のため息とまではいかないにしても、はぁ…と声に出しているのが聞こえる。 ちょろいね…女って。
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