第1章

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俺の視線に気づいたのか女性講師の一人が言った。 『ピアノを教えてるアツシ先生です』 『素敵な方ですよ』 は? 今、俺よく聞こえなかったんだけど、素敵とか言った? どう見ても怖い人にしか見えませんが… ま、俺が関わることはないだろうしな。例え生意気だとか難癖つけられても、軽くあしらえる自信はあった。昔から空手をやってるから、そこらのチンピラ程度に怯えたりしない。 『相変わらずクールよね、「黒眼鏡の君」は…』 はい?なんだって? 「黒眼鏡の君」って…なんだ、それ! 珍しく顔に出ていたと思う。だが女性講師たちは件の「黒眼鏡の君」の話で盛り上がっていて、そんな俺には気付いていない。 なんか、疎外感。こんなこと初めてだ。 今まで女性の輪の中にいて自分が話しの中心から外れることなんてなかった。だけど今俺がここにいるのに、彼女たちが盛り上がっているのはあの「黒眼鏡の君」の話でだ。 でも彼に興味があるわけじゃない。俺は軽く相槌を打ちながら話しを聞き流した。
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