◇バーチャル◇

5/8
前へ
/58ページ
次へ
その返答に、 「え、マジで」 とレンが目を丸くし、 「後ろにいるのが、棗さん。・・姫のナイトだよ」 とウインクしてみせる。なかなかチャーミングな仕草だ。 首をかしげる彼女に、 「姫っつーのは、雪のことだな」 と、後ろから棗が説明を加える。 「白雪。それが雪のハンネだ」 ハンネってことは・・これ、ゲームかなにか? えぇえ!?・・どゆこと、これ 全然わかんない・・ なんだかまた、頭痛くなってきた。 彼女がとまどいながら振り返って、彼を見上げると、 「記憶はなくても、雪は雪やき気にするな」 と、彼が彼女の頭を優しく撫でながら、いう。 「うん・・」 その手のひらの暖かさに少しほっとして目を瞑る。 この人がいると、なんだか安心する・・ なんて考えていると、 「棗さんは相変わらず姫大好きだなー」 とレンが少し呆れたようにいう。 「当たり前や。雪は俺の特別やき」 そういってここぞとばかりに自分を抱きしめ、擦り寄る男の髭が頬に当たりチクチクしたが、今の彼女にはそれがなぜか、とても心地良かった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加