◇バーチャル◇

7/8
前へ
/58ページ
次へ
その後しばらく押し問答が続いたのをみるに見かねてか、少し呆れたように、王子が会話に割り込んだ。 「雪ねぇ、早く棗さんにおぶってもらって。棗さん喜ぶから。さ、行くよ?」 すでにレンは少し前に進んで、こちらに手を振っている。 王子が、早く、というように、無言で見つめているのを感じ、彼女は観念したようにおずおずと、棗の背中に体を預けた。 と、棗が不意に 「あ・・」 と小さく声を漏らす。 「え、なぁに・・?」 聞きかえす彼女に 「いや、なんでもない」 と答えて慌てて立ち上がるのを不審に感じ、彼女が視線を彼の横顔に向けると、その首筋が、なんだか赤い。 心なしか、妙に恥ずかしそう・・な・・て、もしかして!
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加