First Lover~君が僕を見つけたら…~

18/21
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
僕が決勝進出!? 僕と間宮くんが、一対一の優勝争い!?……夢だ。これは夢に違いない! 外野の熱が上昇して行く程、僕の恐怖心にも似た緊張感は高まって手に震えが生じる。 間宮くんは…… この想定外の展開にどう反応しているかが気になって、チラリと彼に視線を送る。 「おお~。俺と朝尾の一騎打ちか。面白くなって来たな~」 ぬわっ!? 「面白くない!全然面白くなんて無いぞ!」 腕組みしながら飄々とする彼を見て、焦った僕は思わず食いつくように叫んでしまった。 「ん~、確かに。同じクラスから出た二人が、わざわざ戦う必要も無いよな。どっちが優勝してもクラスに景品は貰えるんだし。問題は恋人契約券だけで……」 間宮くんは何かを探る様な目をして、語尾を濁しながら難しい顔をする。 ……間宮くん? 「―――朝尾、隠れてこのまま逃げるぞ」 関係者の目を盗み、僕の耳元で囁く彼。 「えっ!?逃げるって…んんぐ…ぐぅ」 「シッ!見つかったらヤバイだろ。―――こっちだ…」 彼は僕の口を手で塞ぎ、ステージの袖に置かれた大道具の陰へと誘導する。 渡り廊下を抜けて、プールのある方向へ駆けて行く二人。 「―――待って間宮くん!どこへ行く気なの!?」 「プールのある中庭からフェンスを登る」 「フェンスを!?校外へ出るって事!?」 彼の背中を追って全力疾走する僕。 「見せたい場所がある。ちょっと俺に付き合えよ」 息切れしながらも必死に追いつこうとする僕を見て、意味有り気な笑みを浮かべる彼が僕に手を差し伸べた。 ――― 「学校を抜け出すなんて……どこかで補導されたらどうしよう」 時々後ろを振り返り、不安気に眉を八の字に下げる僕。 「おまえは本当に心配性だな~。今日は私服なんだから大丈夫だって。それに、街中でフラフラしてる訳でもない。ただ土手を散歩してるだけで、誰も不審に思わないって」 間宮くんは僕を見て、今日のために購入した僕のオレンジ色のパーカーを突きながら悪戯気にニッと笑う。 「そうかな……」 「そう、そう。またこっそりフェンス越えして戻れば良いんだよ」 大胆なフェンス越えに成功し、学校がある住宅地を抜けて土手を歩く僕たち。少しだけ肌寒い秋の風に吹かれながら、秋色に染まる遠くの山々を眺めてホッと息をついた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!