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僕が決勝進出!?
僕と間宮くんが、一対一の優勝争い!?……夢だ。これは夢に違いない!
外野の熱が上昇して行く程、僕の恐怖心にも似た緊張感は高まって手に震えが生じる。
間宮くんは……
この想定外の展開にどう反応しているかが気になって、チラリと彼に視線を送る。
「おお~。俺と朝尾の一騎打ちか。面白くなって来たな~」
ぬわっ!?
「面白くない!全然面白くなんて無いぞ!」
腕組みしながら飄々とする彼を見て、焦った僕は思わず食いつくように叫んでしまった。
「ん~、確かに。同じクラスから出た二人が、わざわざ戦う必要も無いよな。どっちが優勝してもクラスに景品は貰えるんだし。問題は恋人契約券だけで……」
間宮くんは何かを探る様な目をして、語尾を濁しながら難しい顔をする。
……間宮くん?
「―――朝尾、隠れてこのまま逃げるぞ」
関係者の目を盗み、僕の耳元で囁く彼。
「えっ!?逃げるって…んんぐ…ぐぅ」
「シッ!見つかったらヤバイだろ。―――こっちだ…」
彼は僕の口を手で塞ぎ、ステージの袖に置かれた大道具の陰へと誘導する。
渡り廊下を抜けて、プールのある方向へ駆けて行く二人。
「―――待って間宮くん!どこへ行く気なの!?」
「プールのある中庭からフェンスを登る」
「フェンスを!?校外へ出るって事!?」
彼の背中を追って全力疾走する僕。
「見せたい場所がある。ちょっと俺に付き合えよ」
息切れしながらも必死に追いつこうとする僕を見て、意味有り気な笑みを浮かべる彼が僕に手を差し伸べた。
―――
「学校を抜け出すなんて……どこかで補導されたらどうしよう」
時々後ろを振り返り、不安気に眉を八の字に下げる僕。
「おまえは本当に心配性だな~。今日は私服なんだから大丈夫だって。それに、街中でフラフラしてる訳でもない。ただ土手を散歩してるだけで、誰も不審に思わないって」
間宮くんは僕を見て、今日のために購入した僕のオレンジ色のパーカーを突きながら悪戯気にニッと笑う。
「そうかな……」
「そう、そう。またこっそりフェンス越えして戻れば良いんだよ」
大胆なフェンス越えに成功し、学校がある住宅地を抜けて土手を歩く僕たち。少しだけ肌寒い秋の風に吹かれながら、秋色に染まる遠くの山々を眺めてホッと息をついた。
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