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全ての終わり
ーハァ、ハァ
あいつらは追いかけてきてるのだろうか?
後ろを振り返る余裕なんてない。先ほどまでドックドックとなり響いていた心臓が身体中を移動してるのではないかと思うほど、全身が高揚し痛みすら感じる。
逃げ道なんてない。
そんなことはわかっていても走り続ける事をやめるわけにはいかない。
怖い。怖い。
階段を走りながら4階を目指す。
目的の場所は4階まで行ったあと、更に短い階段があるため5階になるのかもしれない。
もう限界だ。そこまで行って何になる?
一度行った時には鍵がかかっていて良かった。と安堵のため息を吐いた覚えがある。
4階に着いた頃には先輩に目を付けられたくないから…と短くするのを我慢していたスカートから覗く足はガクガクと震えていた。
走ったからなのか、恐怖からなのかはもうわからない。
ーあともう少し
立ち入り禁止と書かれた紙がぶら下がっているチェーンをまたぐ。電気は点いていないが廊下が明るいので薄暗いと感じる程度だ。
それでも初めてここを上る時は処刑台の階段のように思えた。
階段を上り終わると下からは見えない位置にドアがある。光が入らないようにするためか窓の部分には板が貼ってある。
ドアノブに手をかけ右に回す。
「え?」
ドアノブを回したままゆっくりと押すと隙間から明るい光が入り込んだ。
眩しさで目を眩ませながら外へ出る。
そこは初めて見る屋上からの景色だった。
遠くに山が見える。
しかしそれは金網越しの景色であり、お世辞にも綺麗とはいえない。
ーもうこれは運命なんだ。
金網に手をかけゆっくりと登っていく。
止めてほしい…そんな気持ちもあったが、誰かにこの格好を見られるのは恥ずかしいな。と冷静に考えている自分もいる。
悪戦苦闘しながらも金網の反対側に足が付いた。
床の縁まで行き下を覗く。吸い込まれそうな景色にクラッと目眩がした。
この高さだったら死ねるのだろうか?
右足を前に出す。
キーンコーンカーンコーン
ハッと我にかえった。もう45分も彼女達から逃げていたんだ。
ー死にたくない!死にたくない!
そう思った時にはもう遅かった。右足が空中を踏んでいた。
フワッと左足が浮いた。
その瞬間
「ねぇ。一緒に遊ぼう」
と声が聞こえた気がした。
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