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「美波今日一緒に遊ぼう」
購買で買ったメロンパンを頬張りながら波琉は言った。
波琉とは小学3年生の時に同じクラスになってからずっと一緒だ。
きっかけはお互いに名前に【波】がついているから。という単純なものだったが、一緒にいるうちに驚くほど気が合い気が付けばいつも隣に波琉がいた。
「波琉はいつも突然すぎるよ。」
お弁当に入っていた卵焼きを口に入れ、少し塩を入れすぎたか…と眉間にシワを寄せる。
「お願い!今日美波と遊べなかったら私死んじゃう。」
私を誘うときは毎回このセリフだ。
自分の中で行くことは決っていたが、バリエーションが少ない誘い文句を言われると少し困らせたくなる。
「うーん。でも今日は…」
言いかけた言葉を遮るように
「可愛い口紅があってね。それを一緒に買いたいの」
「口紅?そんなのいらないよ」
心の底から思った言葉は必要以上に冷たく口から吐き出された。
「そんな寂しいこと言わないで!絶対美波も欲しいって言うから」
私の言葉とは反対に波琉は明るく言い放つ。
「付いていくのは良いけど、本当に私はいらないからね」
「やったー!美波大好き。」
いつものパターンだ。最後は大好きで終わる。意地悪の一つでも言おうかと思ったが、嬉しそうな波琉を見ているとこっちまで嬉しくなってしまう。
「もう!喜びすぎだよ」
と嬉しさを顔に出さないようにして可愛くない返事をする。
波琉は大好物のメロンパンと砂糖がたくさん付いたあんドーナツを食べていた。
どうしてそんなに甘いものばかり食べているのに太らないのか、いつも疑問に思う。
私は毎日ネットで太らないレシピを探してお弁当を作っているというのに。
出来れば毎朝ギリギリまで寝ていたいし、冷蔵庫の残り物で作れるほどのスキルは無いので毎日スーパーに必要な食材を買いに行っているため、毎月のお小遣いはほとんど消えてしまう。
波琉はお小遣いの他にお昼ご飯代と飲み物代を毎日もらっていると言うから、欲しい物を欲しい時に買っても平気なんだそうだ。
父親が医者で母親が看護師。
いわゆるお金持ちだ。父親がサラリーマンで母親はパートをして家計を支えている私の家とは大違い。
うらやましいと思った事もあったが、母親が夜勤の時はテーブルにお金だけが置いてある。と寂しそうに波琉が話していた時に、それは可哀相だと心から同情をした。
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