全ての終わり

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波琉に構ってもらえず居づらさを感じ始めてトイレに立つ。 部屋から出るとハァとため息をついた。 トイレに向かっていると後ろから「美波!」と声をかけられる。 振り向いたそこには拓くんが立っていた。 「どうしたの?」 声が震える。 「いや。何かつまらなそうだったから。ゴメン!トイレだよね。本当ゴメンね。」 拓くんが踵を返そうとしたとき 「違うの。ちょっと居づらいなと思って…ト、トイレは別に行きたくないんだ」 顔が沸騰しそうだった。 「じゃあさ、ちょっと話さない?」 そう言って廊下のソファへ座り、こちらを見ながらポンポンとソファを軽く叩く。 斜め向かいの部屋から大学生くらいの集団がワイワイと出てきた。 伝票を持っているので終わって帰るとこだろう。 「おじゃまします」 と言って隣に座る。 膝と膝がぶつかり、近くに座り過ぎたかもしれないと思った。 ドキドキしながら拓くんの言葉を待っていると 「美波って波琉と仲良いよな。大和が波琉のこと狙ってんだけど、実際どうなのかな~?」 ーあぁ…それで私を呼び止めたのね。 期待をしてしまったことが恥ずかしくなった。 「波琉とは仲良いけど、恋愛話しないからわからないんだよね。ごめんね。」 努めて明るい声でそう言って立ち上がる。 と、急に腕を掴まれ先ほどまで人が居た片付けの終わっていない部屋に引っ張られる。 「ごめん。違うんだ。美波と二人で話がしたかっただけなんだ。」 ーえ? 驚いて顔を上げた瞬間に拓くんの唇が私の唇に触れた。 「本当は隣に座りたかったんだ。」 そう言った拓くんの顔が可愛くて愛おしかった。 「好き」 思わず言葉にしてしまった。 拓くんは驚いた表情で私を見た後に、安堵と嬉しさの入り交じる顔をした。 「美波…甘い匂いがする。」 手の甲では拭いきれなかった口紅のおかげだった。 近付かなければわからない匂いも、唇同士が触れたのだから気付いてもおかしくはない。 拓くんの顔が近づいてくる。 私は拓くんの腕をギュっと掴み目を閉じた。
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