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泣きながら「返して!」と叫び続けた。
その頃にはもう、有季が馬乗りになって私を押さえつけていた。
「じゃーん。」
早苗がスマホの画面を私に見せてきた。
『もう拓くんの事は好きじゃなくなった。てか、浮気相手の事好きになったからもう拓くんいらない。さよなら』
呆然とその内容を見ていると【既読】の文字が更新された。
『最低だね。浮気女』
冷たい文字が並んでいた。
高校生の恋愛なんてそんなものだ。
何故急にそんなことを言ってきたのかなんて関係ない。
あれから学校が休みの時に3回ほどデートをした。キスだって何度もした。
唇を重ねるだけのキスではなく、舌を絡ませお互いを求めた。
3回目のデートでカラオケに行った時は、最後までしたいと誘われた。
さすがに「ここじゃちょっと…」と言うと家には親が居るし、ホテルも入れないしな…と残念そうにしていたが美波が嫌な事はしたくない。と言ってくれた。
怒りで震えたが体の大きな有季に敵うわけがなく、ただ泣きながらSDカードとスマホを壊されていくところを見ていた。
涙でグチャグチャになった顔で教室に行けるわけがなく、波琉が持ってきた自分の鞄を持って早退をした。
『最低だね。浮気女』
の文字が頭から離れることはなかった。
具合が悪いと言って2日間休み、土日が過ぎた。
「今日も休む」と親に言ったがひどく叱られ絶対に行きなさい。と言われた。
足取りが重い。ゆううつで仕方ない。
このまま逃げてしまおうか?そう考えている内に学校に着いた。
仕方なく教室に行くと全員の視線が私に注がれた。
一瞬にして怖いと感じた。
無言で席に着くと「浮気女」「キモい」「ヤリマン」と声が聞こえる。
そうか。拓くんが皆に言ったんだ。
涙をこらえながらずっと下を向いていた。
授業が終わり昼休みになると波琉が笑いながらこちらに向かっている。
周りを見るとクラスメイト全員がこちらを見て笑っていた。
「美波、一緒に遊ぼう?」
音を立てて立ちあがり廊下へ走った。
椅子が倒れた音がした。
ドクドクと心臓が音を立てている。
私は無我夢中で走った。
屋上に向かって。
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