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新しい年がスタートして早々、師匠は私にある話をした。
その話とはーーーー
私にニューヨークに行けという。
「何で?どうして師匠の側でこれまで通り勉強しちゃいけないんですか?」
私は怒りすら覚えながら師匠にいった。
師匠に食ってかかるのはこれが初めてだと思う。
だけどあまりにも突然の話過ぎて納得がいかない。
「お前の師匠は俺だ。お前は黙って師匠のいう通りにすればいいんだ。偉そうに口答えするな。」
「偉そうにって…ひ、どい…。もしかして、私の事が邪魔になったとか……」
「馬鹿な事、言ってんじゃねぇよ。」
「馬鹿ってこんな事を急に言う師匠の方が馬鹿です。」
「はあ?よくもそんな偉そうな事言えたもんだな。何か勘違いしてんじゃねぇのか?お前はあくまで俺の弟子だ。その事を忘れるな。」
余りにも師匠の身勝手な言葉に気づくと財布だけもって私は部屋を飛び出していた。
行き先なんて考えていなかった。
ただ、あの場所にあれ以上いるのが辛くて逃げてきた。
涙がぽろぽろと溢れてくる。
だけど師匠にその涙を見せるのも嫌で
兎に角、出てきた。
あてもなく歩いていると結局、
私はあの水族館の巨大な水槽の前に来ていた。
ついこの前のクリスマスに二人でこの場所にいたというのに…
あんなにも優しいキスをくれたのに…
巨大な水槽が段々と滲んで見えだす。
師匠、追いかけてもくれなかった…
ほんの少しだけ期待していた。
後ろから直ぐに抱きしめてもらえるんじゃないかって
心のどこかで甘えた考えが一瞬よぎったんだ。
不意に、肩を捕まれる。
振り返るとそこにいたのは師匠ではなく須磨圭だった。
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