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須磨さんによると
元、源太郎さんである冴子さんはーーー
って、何かややこしいな。
その冴子さんは師匠の大学時代からの友人で学生時代もよく一緒にいる事が多く
共に刺激を与え合った仲らしい。
ちなみに大学を卒業するまでは源太郎さんとして過ごしていたそうだ。
卒業後、冴子さんは単身でニューヨークへと渡り向こうで何年か修行をつみ、その後、独立し設計事務所を作ったそうだ。
今じゃ、ニューヨークで話題の建築家らしい。
「色んな意味でね。」
と含み笑いをする須磨さん。
「俺も何度か会った事あるけど仕事の腕は確かだよ冴子さん。だから和さんも君を預けようと決めたんじゃないかな。
それに一応、冴子さんは見た目だけじゃなくて心も女だから色んな心配しなくて済むしね。」
肩を竦めながら残りのコーヒーを飲み干す須磨さん。
色んな心配って………
「だけど私、師匠の事を心から尊敬しています。師匠に憧れてこの業界に入ったんです。だからこのまま師匠の側で色々と学びたいんです。それじゃダメなんですか?」
「へぇ、師匠って呼んでんだ。」
あっ、しまった。
つい、師匠って言っちゃった。
「いえ、その、な、和さんが…。」
「わかってるって。きっと、和さんがそう呼べって言うんでしょ?大体の想像つくよ。まあ、それはいいとして。んーそうだな…」
須磨さんは少し言葉を選びながら
「秋のコンペの時に思ったんだけどさ、
和さん本当に変わったなぁって
昔みたいに全部一人でやってた頃とは違う自信に溢れてるっていうのかな。
きっとその自信は君の存在であったり今の会社のメンバーによって出てくるものなんだろうね。
俺、あの時のプレゼン見て思ったよ。どんどん進化する和さんをまだまだ俺は追い越せないなって。完全なる負けだったよ。」
確か師匠もコンペの後、同じ様な事言ってたっけ?
「きっと君たちのお陰で和さんが変われた様に今度は君にもどんどん変わって欲しいんだと思う。
新しい環境で目を養い確かな技術を得て
これから君自身がちゃんとこの世界で歩いていけるように…。」
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