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須磨さんは空になったコーヒーカップから目を上げ私を見据えると
「俺がいうのも何だけど、ニューヨーク行きなよ。あの街にはきっと得るものがたくさんあるよ。
それに今回の事、和さんにとっても
相当辛い決断だと思う。
だけど、それでも君にたくさんの事を学ばせて成長して欲しいんだよ。
これから先の長い長い君の将来を考えて
ほら、ことわざにあるよね。
かわいい子には旅をさせようって思ったんじゃないかな。」
須磨さんにお礼を言ってから別れて
家に戻ってきたけど師匠はどこにもいなかった。
師匠のいない和室のリビングを見渡す。
もうすぐ一年か…。
初めてここに来た時、あのダミーの囲炉裏見て私、引いたんだよね。
このちゃぶ台で師匠と初めて食べたご飯は引っ越しソバだっけ…。
このソファーで師匠より先に寝ちゃって怒られたなぁ。
師匠との思い出が次々と鮮明に蘇る。
それから私は師匠の仕事部屋に入りそのまま床にペタンと座ってみる。
私、ここで初めて師匠と結ばれたんだよね。
結局、何度抱かれても今でも慣れるなんて事なくてドキドキは収まらないね…。
師匠の優しい手を思い出す。
私の頭をくしゃくしゃってする
あの大きい手
ポタリ…
涙が床に落ちる…
ポタリ、ポタリ
一つ落ちるとまた一つ落ちる。
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