破門≠恋人?!

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私がデザイン事務所NAGOMUに通うのも後少し。 今日は久しぶりに坂井さんといつもの定食屋に来ていた。 しかも今日は坂井さんの自慢の彼氏でもある、あの奈良さんも一緒だ。 三人でいつもの焼きサバ定食を頬張る。 いつもの坂井さんなら私に師匠との事を色々と突っ込んでくるのに今日は何も言わない。 「坂井さん、色々と…」 私がお世話になったお礼を言おうとすると 手に持ったお味噌汁を見つめたまま 「ココちゃん、そのうち長いお休みとって会いにいってあげるから、それまでに少しはニューヨーカーらしくあか抜けていなさいよ。」 と言うとお味噌汁を一気に飲んで咳き込む坂井さん。 奈良さんが坂井さんの背中をさすりながら 「住吉さんがいなくなった後は僕が彼女と焼きサバ定食を毎日食べるよ。」 と優しく微笑む奈良さん。 その穏やかな笑顔を見るとやっぱり肉食だなんて信じられないや。 何て思いながら坂井さんとの最後の定食屋ランチを楽しんだ。 こうしてお世話になった人達へ挨拶したりと、少しずつ旅立ちへ向けてのカウントダウンが進んでいき、 そしてーーー いよいよ、その時が来た。 明日、私はニューヨークへと発つ。 ここのところ、引っ越しの準備や慣れない英会話教室に通ったり その上、立派な送別会を私の為にひらいて貰えたりと… 師匠も例のコンペの仕事が本格的に動きだし、ほとんど二人で過ごす時間がとれていなかった。 それは私にとってむしろ良かったのかもしれない。 きっと二人でいればいるほど離れてしまうということが出来なくなりそうで怖かった。 やっとの思いで決心した事がいとも簡単に崩れてしまいそうで…。 そして旅立ちを明日に控えて漸く二人でゆっくりと過ごせる時間ができた私たちは 師匠と初めて行ったあのイタリアンのお店で食事を済ませマンションへと帰ってきた。
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