194人が本棚に入れています
本棚に追加
後ろから聞き慣れた声がした。
振り向くと、そこには俺より身長が高く、さらさらとした長いようで長くなく、短いようで短くない茶髪、僅かに浅黒い肌に服越しからでもわかる鍛え上げられた筋肉、黒色の眼、そして整っている顔立ちをした好青年が居た。
俺はその青年のことをよく知っている。梨華同様、幼稚園からの幼馴染の片桐宗臣だ。
「宗臣!お前もこの学園に入学したのか!」
「ああ。雄吾がここに来るとは思っていなかったけどな」
俺と宗臣は右手でハイタッチする。
「実戦テストどうだった?っと聞くまでも無いよな」
「そうでもないさ。俺が相手したのは、魔術の相性が最悪の先生だったからな。お前は・・・・・・相性が良かったみたいだな」
「まあな。よう梨華。中学の卒業式以来だな」
宗臣は俺から視線を外し、梨華の方に向ける。
その時梨華は、同じ新一年生の女子たちに囲まれていた。中には何人か男子が混じっている。
集まっている生徒たちは、梨華に次から次へと質問をしている。
最初は答えていたが、絶え間なく質問されている為、俺と宗臣に助けを求める視線を送って来た。
「ほれ。お前のお姫様が助けを求めているぞ」
「俺の姫じゃないし、俺だけじゃなくてお前にも求めているからな」
俺はそう言い放ってから梨華をサポートしに行く。
宗臣も数秒考えてから来た。
俺と宗臣が間に入るや否や、集まっていた女子は顔を真っ赤にして体育館に逃げるように走っていった。
数人いた男子は、俺と宗臣を一睨みしてから体育館に向かっていった。
「・・・・・・またこのパターンか」
宗臣は一瞬間を空けてから言う。
「また」というのは、中学の時も同じことがあったのだ。
「そうだな。俺は予想していたけど。さっさと体育館に行くぞ」
俺は頭の後ろで腕を組みながら、先に体育館に向かって歩き出す。
宗臣も踵を返して、後を着いて来るように体育館に向かって歩き出す。
梨華は何かを考えているのか、その場から動いていなかった。
「おい梨華!早く来い!置いてくぞ!」
「え?ああ!ちょっと待ってよ~」
梨華は慌てて俺たちの後を着いて来る。
長いような短いような入学式を終え、俺たち三人は正面玄関前にあるクラス分けの紙が貼られている掲示板を眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!