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――ねぇ、『サイコパス』って知ってる?
『サイコパス』?
うん。なんかね、精神的におかしい人っていうか、完全に良心が欠落してる人みたいな感じの……。
えっと、とにかく危ない人って事?
うん、そうそう。
それで、その『サイコパス』がどうしたの?
実はね、今、この町ではそういう危ない人達の人口が凄い勢いで増えてるっぽいんだよね。
へぇ、そうなの? でも、どうしてそんな事が分かるの?
えっとね、それは、その……。ほら、最近は学校とか色んな所でそういう噂が流れてて……。
……つまり、根拠はないのね。
で、でも! 最近はなんか周りでおかしな事ばっかり起きてる気がしない? 失踪事件とか、傷害事件とかの件数も例年より多いってニュースで言ってたし、きっと増殖した『サイコパス』達が関わってて――。
はいはい。ところで熱弁してるところ悪いんだけど、そろそろお昼休みも終わっちゃうし、早く教室戻ろ?
ちょっとっ、真面目に聞いてよぉ!?
☆
昼下がり。
中部地方に位置するとある県の、その更に内陸部に位置する、とある公立高校。
およそ数十年前に近隣住民達の要望によって創立した、比較的歴史の浅いその高校の片隅。
本棟、中棟、北棟の三つの校舎によって構成された学校の内の、その本棟の屋上で、今しがた時間を気にして校舎内へと戻って行った二人の女子の後姿を、密かに給水タンクの裏から見届ける気配が一つあった。
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