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「おい、どうした?」
パタンと本を閉じて、体ごと俺へと向き直る友人に、俺は先ほどの出来事を簡潔に説明した。
「本当にさっきは緊張してさ……」
「なるほど」
しばらく考え込むような間を挟んだ後に、なぜか陽規は掛けてもいない眼鏡のブリッジをくいっと押し上げる仕草を行ってから、俺の鼻先に指を突き付けて言った。
「つまりお前は、女子同士の内緒の会話を盗み聞きして密かに息を荒くしていた訳だな。いやらしい奴め」
「誤解を招くような言い方をするな。あと人を指さすな」
適当な調子で相槌を打ちつつ、ふと、俺は陽規に問い掛ける。
「ところで、お前はサイコパスって知ってる?」
「あぁ、一応な。っていうか、検索エンジンで探せば結構ヒットするぞ。サイコパス診断とかいうのもあるしな」
「診断……? ちなみに、それってどんな内容なんだ?」
「そうだな……。それじゃあ、今から一つだけその診断に出てきた問題を出してやるよ」
「お、おう」
ごほん、と、陽規は一度咳払いをした後、軽く視線を上向けつつ、前に自分が経験したらしいサイコパス診断とやらの内容を口にした。
『あなたは、自分が住んでいるマンションのベランダに向かいました。けれど、その時に偶然、マンション前の空き地で殺人が行われた瞬間を目撃してしまい、運悪く犯人とも目が合ってしまいました。この時、犯人はあなたを指して、その手を一定の動きで動かしました。さて、これはどういう意味でしょう?』
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