本郷さくらの受難

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「ねえ、さくらちゃん。ちょっとお使い、頼まれてくれないかしら?」 思えばそれは、悪魔の囁きに他ならなかった。 だいたい、生まれてこの方、二十三年間、姉――進藤あやめの言葉で、あたしが得をした事が一度でもあっただろうか? いや、ない。 即答で、ない。 昔から、飛び抜けて頭と要領の良いこの姉に、何度利用されてきた事か。 重々身に染みて承知の事だけど、“フリーター”という肩書の“無職”である今のあたしにとって、 「バイト代、出すから」 と、続いた一言はなにより魅力的で、ついつい彼女の話に耳を傾けてしまった。
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