香る身体

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その後、黒丸は黒猫に戻った。 3時間後、目を覚ました黒丸は猫に戻っている自分の姿に驚いた。 『猫に戻ってる!』 『う…ん…』 黒丸の声で目を覚ました渚は上半身を起こし黒丸を見た。 『俺…猫に戻っちゃった…』 『身体の具合は大丈夫なのか』 『何ともないけど…』 黒丸のお腹が鳴った。 渚はクスッと笑い『待ってて、餌を持ってきてあげる』と言って寝室を出ていった。 『……』 黒丸が毛繕いを始めたその時、光に包まれながら天使の女が現れた。 『猫に戻っちゃったのね』 『誰だ』 黒丸は天使の女を見つめた。 『あんたを人間にした者だけど』 『あんたが何で俺を人間の姿に』 『渚君が友達の悠生君にむりやり抱かれているのを見ながら言ったでしょ、俺が人間だったら渚を救えるのにって…だから願いを叶えてやったのよ』 『渚のことどこまで知ってる』 『すべて知ってるわよ』 天使の女は杖を使って壁に渚の姿をうつしだし父親や悠生に抱かれている姿を黒丸に見せた。 『もういい…』 黒丸は顔をそらした。 天使の女は杖で映像を消した。 『感謝してもらいたいわね』 『感謝?』 『私のお陰で良い思いが出来たでしょ』 『何で俺の願いを叶えてくれたんだ』 『あんただけじゃないわよ、世界中の猫が願えば私はその猫の願いを叶える』 『何回でも願いは叶えてもらえるのか』 黒丸はじっと天使の女を見つめた。 『本気の願いなら何回でも良いわよ』 『……』 黒丸はベットからおり天使の女に向かって頭をさげながら願いを口にした。 『俺を完全の人間にしてくれ、頼む』 『猫に戻れなくても良いのね』 『あぁ…人間の姿で渚の側にいたいんだ』 『その願い叶えてあげるけど、条件がある』 『何だ』 黒丸は顔をあげた。 『あなたの飼い主、圭介の記憶を消すわ』 『圭介の記憶を』 『心配しなくても大丈夫よ、猫と過ごした記憶を消すだけだから…その代わり新しい記憶を入れるから』 『新しい記憶?』 『あなたと圭介が兄弟という記憶よ』 『俺と圭介が兄弟!』 黒丸は驚いた。 『それで良いかしら、良いならすぐに始めるけど』 『お願いします』 『わかった』 天使の女は杖を使って黒丸の願いを叶えた。 そして天使の女はその場から消えた。
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