香る身体

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『…うう~ん…』 哲郎は眠り続けた。 『……』 哲郎を突き放しその場を離れた渚は家を出て行った。 それから暫くして雨が降りだし渚は暗い夜道を濡れながら歩いた。 『父さんが俺に恋…冗談だよな…』 『渚?』 『え?』 背後から声をかけられ渚は立ち止まり振り返った。 『こんな夜遅くに何をしてんだ』 『悠生』 渚は傘をさしている悠生に顔を向けた。 『ずぶ濡れじゃないか』 悠生は濡れないように渚に傘をさした。 『……』 渚はうつ向いた。 『何かあったのか?』 『今日はお前の家に泊まって良いか』 『良いけど…』 『ありがとう』 渚は歩き始めた。 『おい、待てよ』 悠生は渚の側に駆け寄り並んで悠生の家に向かった。 歩きながら悠生は渚の顔をチラッと見て泣いている姿に驚いた。 30分後、悠生の家についた悠生と渚は家の中に入った。 『風邪をひくといけないから先に風呂に入って来たら』 『…あぁ…』 渚は浴室に行った。 制服を脱ぎ全裸になった渚は風呂の中に入り湯に浸かった。 『……』 『渚、タオルとバスローブはかごの中に入ってるからな』 『ありがとう』 『……』 悠生は浴室を離れキッチンに行くと2人分の料理を作り始めた。 暫くして渚は風呂から出りタオルで濡れた身体を拭くとバスローブに着替えた。 そして渚は浴室を出てリビングルームに行くとソファーに座った。 その頃、悠生は出来上がった2人分の料理をテーブルに運んでいた。 『渚の奴、遅いなぁ…まさかのぼせて倒れてるんじゃないだろうな』 悠生は急いで浴室に行きいなとわかるとリビングルームに行った。 『ここにいたのか、食事を作ったんだけど一緒に食べないか』 『何で聞かないんだ』 『聞かなくてもわかるよ、親と喧嘩でもしたんだろ』 『喧嘩?…なら良いのに…』 渚は涙を流した。 悠生は渚の側に座り『何かあったのか?』と言った。 渚はうつ向きながら『酔って帰ってきた父親にむりやり身体を抱かれた、そしてその姿を母親に見られて…』と言って渚は激しく涙を流した。 悠生は落ち着かせようと渚を優しく抱き締めた。 『明日は学校を休んで遊びに行かないか』 悠生は渚の背中をさすりながら言った。
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