香る身体

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『悠生君、ちょっと良いかな』 国分は悠生を部屋から連れ出した。 『まだ怒ってるんだな』 『悠生君、なぜ彼は男に怯えるようになったんだ、それに勝彦と正司も言ってた匂いに誘われたって…俺には匂わないけどな』 『渚が男に怯えてるのは、実の父親に抱かれたからなんだ』 『実の父親に!』 国分は驚いた。 『父親に言われたそうです、渚が悪いんだ男を誘う香りを放つからと』 『悠生君も匂いに誘われて彼を抱こうとしたのか』 国分の言葉に悠生は真剣な顔で言った。 『俺は香りに誘われて渚を抱こうとしたんじゃない、好きだから…身体を重ねたいと思ったから…』 『彼は知ってるのか』 『知らない…』 『気持ちを伝えてみたら、誤解が解けるかもよ』 『今はやめておきます…それから渚が落ち着くまで側にいてあげてください、国分さんには心を許してるみたいだから…それと学校の先生には俺からうまく伝えておきますから』 国分に頭を下げると悠生はその場から離れていった。 国分は部屋の中に入りベットに座っている渚に近づいた。 『悠生君、帰ったよ』 『……』 渚はうつ向きながら顔をそらした。 『学校の先生には悠生君がうまく伝えておくって』 『……』 黙り込む渚に国分は携帯につけている黒猫のストラップを渚に見せた。 『可愛いだろ』 『……』 顔をあげた渚は笑みを浮かべながら黒猫のストラップを見つめた。 『猫、好き?』 『…はい、好きです…』 『家に黒猫が1匹いるんだ見るかい?』 国分の言葉に渚は嬉しそうに頷いた。 『行こうか』 国分と渚は部屋を出て駐車所に行った。 『先に車に乗ってて』 『はい…』 渚は助手席のドアを開き乗り込むとドアを閉めシートベルトをしめた。 国分は携帯で悠生の父親に電話をかけた。 『もしもし社長、渚君のことですが、私が見ることになりました』 『悠生はどうしたんだ』 『迎えに来てくれたんですが、渚君が悠生君の家に行かないと言って』 『そうか…お前は良いのか』 『はい』 『そうか…』 『忙しいときに電話をして申し訳ありません…切りますね…』と言って電話を切ると国分は運転席のドアを開き乗り込むとドアを閉めシートベルトをしめた。 そして国分は車を走らせ駐車所を出ると国分の家に向かった。
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