香る身体

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『猫の名前、何て名前ですか?』 渚は運転している国分の顔をチラッと見た。 『黒丸だよ』 『黒丸…雄ですか?』 『雄だよ…おとなしくて、少し太ってて可愛いんだ』 『見てみたいなぁ…』 『俺の携帯に画像があるから見て良いよ』 国分は運転しながら携帯を渚に渡すと再び運転に集中した。 渚は携帯を開き20枚以上ある黒丸の画像を楽しそうに見つめた。 それから30分後、車は国分の家の駐車所に止まった。 『ついたよ』 『はい』 渚はシートベルトを外しドアを開くと助手席からおりドアを閉めた。 国分もシートベルトを外し運転席からおりドアを閉めた。 『どうぞ』 国分が鍵を開けドアを開くと黒猫の黒丸が出迎えた。 『ニャー』 『可愛い…』 渚は黒丸の頭を撫でた。 『圭介の新しい男か』 『え…』 喋る黒丸に驚いた渚は国分を見つめた。 『どうしたの?』 『今…喋った…』 『ニャー…ニャー…』 黒丸は国分にしがみついた。 『お腹空いたのか…』 国分は黒丸を抱っこしキッチンに向かった。 『……』 渚は玄関のドアを閉め靴を脱ぎ上がるとキッチンに行った。 国分は黒丸に餌をあげながら『俺はまだ仕事があるんだ、渚君、1人で大丈夫かな』と言って国分は渚を見た。 『大丈夫です…』 『遠慮しないでいいからね』 『はい』 『それと、俺以外の者が家に来てもドアを開けないこといいね』 『わかりました』 渚が頷くと国分は玄関に行き外に出るとドアを閉め鍵をかけた。 そして国分は運転席に乗り込み車を走らせ仕事場のラブホテルに向かった。 その頃、渚は餌を食べている黒丸をじっと見つめていた。 『猫が餌を食べるのが珍しいか』 『やっぱり喋ってる、国分さんは築いてないのか』 『普通の人間は動物と会話できない』 『じゃあ何で俺は会話が出来るんだ』 『俺は寝るけど、飯が食いたいなら冷蔵庫に圭介が作ったお好み焼きがある、温めて食えば美味しいぞ』 黒丸はキッチンから離れソファーに近づくとソファーの上にあがり眠りについた。 渚は冷蔵庫から皿に盛られたお好み焼きを取りだしそのお好み焼きをレンジで温めた。 『……』 渚は喋る黒丸が気になってチラチラと黒丸を見た。 黒丸が目を覚まし渚を見ると渚は顔をそらし温まったお好み焼きをテーブルに運ぶと椅子に座り箸でお好み焼きを食べた。
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