かえりみち

3/5
前へ
/119ページ
次へ
先輩にお姫様抱っこされたまま、陽が落ちた狭霧原の田舎道。 田舎の農道とはいえ、他に誰かいやしないかと心配にもなるけれど―――もういいやって気分にもなりかけてきた。 気分が落ち着いたのは、一時間もしたくらいだろうか。 先輩も、あえて、回り道とかをしてくれているらしかった。 改めて恥ずかしくなってくるけれど―――でも、言わなくちゃいけないことが、一杯あった。 「あのっ、先輩…」 「ん?」 「ありがとう、ございます」 それだけを言う。先輩は、こくりと頷くと、 「…ごめん」 そう、謝ってきて。私はちょっとドキリとする。本当に間近で、先輩の顔は、申し訳なさそうな、苦しそうなものだった。 「…あんなことになっているなんて、知らなくてさ」 「…先輩」 「今回、助けられなかったらって考えると」 それだけでぞっとする、と先輩は言った。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加