95人が本棚に入れています
本棚に追加
時計は回る。
放課後になる。
「顔色が悪いですけれども、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ありがとう狭霧ちゃん」
にこ、と私は笑ってみせた。
無理がある表情だろうなと自分でも思う。狭霧ちゃんは今日一日、終始心配そうな表情だった。
転校してきたばっかりなのに、こんな気を遣わせて、申し訳なさで一杯だった。
私が青白い顔をしていることも、ちょっと震えていることも、全部きっとお見通しだろうなと思う。
狭霧ちゃんは、聡い子みたいだから。
だから尚更に、心が痛む。
私は、そんな視線すらも痛くて、「じゃあ、私、速く帰って休みますから」と、まるで逃げ出すように学校を飛び出してきてしまった。
結局、私は、焼け跡へ行くことに決めていた。
場所が近づいてゆくにつれて、心臓の鼓動が跳ねあがってゆく。
冷や汗が出て、喉がカラカラで。凍った棺を背負って歩かされているような、そんな道のり。
最初のコメントを投稿しよう!