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「!?」
思わず、その場の全員―――私含め全員の動きが止まった。
その黒い燕尾服の執事は、私に一番近い位置に居て、私と数メートルも離れていない場所だったのだけれど、―――その男が、突如、前のめりに倒れた。
あっと声が響いた。
私の喉の奥から、悲鳴に近い声が洩れた。
「―――」
執事の背後に立っていた、一つの身体。
夕焼けを背景にして、その身体は黒く、そして、力強く立っていた。
拳を握りこんでいた。
背後からの右の拳で、執事を倒したのだと、私は一瞬で理解して、そして、―――誰よりも恋しいその姿に、色んな意味で、涙が零れた。
「先輩―――」
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