夕陽は落ちて

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残り一人の執事は、迫ってはきていたが、明らかに腰が引けていた。 ―――後に狭霧は言った。 この時の俺は、まさしく鬼に見えたと。 だが畜生道のような真似をしていた連中だ。お仕置きならば鬼の力が相応しい。 情けない悲鳴を上げながら、執事が破れかぶれの拳を放ってきた。 だがその勢いも構えもなっちゃいなかった。多少は鍛えてあるようだったが、それでも俺の相手ではなかった。 「―――身の程を知れ、畜生が」 正拳突きで正面から応酬した。 拳と拳の真正面からの打ち合い。しかし勝負は一瞬。執事の指の骨が砕ける。俺の拳はさらにめり込む。奴の手甲がめきめきと音を立てて粉砕され、手首までをも砕き、ぐにゃりと曲がったところで、執事が悲鳴を上げた。 やはりがら空きになった胴に、アッパーカットをぶち込めば、また一つの身体が宙に舞い、そして落ちて、動かなくなる。
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