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―――その時、中島は、落ち往く世界の中に、鬼の姿を見ていた。
我が家の執事は、いずれもそういう経験がある連中なのに。
この一つ上の男は、そいつらをモノともせず、一分もせず全ての攻撃を弾き、あまつさえ反撃し、こちらを完全沈黙させた。
まさしく鬼だった。
鬼の眼が、畜生を見据えて燃えていた。
「…話は大体聞かせて貰った」
「…だ、だから何だと?」
言葉を交わしても無意味だと俺は知っていた。だから拳でやり合うのみである。
ひゅん、と俺は拳を飛ばす。
中島が腕を構えて防御の構え。
案の定だと俺は思う。
コイツ自身も、ある程度は心得のある人間なのだろう。だが、今回は、その心得があるがゆえに、寿命を縮めたな。
拳はフェイントである。
本命は蹴りだった。
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